日本のファッション30年が凝縮した「Future Beauty」

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■日本ファッションの過去現在未来 黒の衝撃からアニメ、ネット、メディアの文化までを網羅■

 

 

Future Beauty Future Beauty
深井 晃子

平凡社 2012-07-27
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先日お伝えした、東京現代美術館で開催している「Future Beauty 日本ファッションの未来性」展。ロンドン、ミュンヘンときてついに東京に上陸。
そこで、カタログとして販売されている「Future Beauty」。展示会に行かなくてもAmazonなどで取り扱っています。結論から言うと、これはオススメしたい。実際展示会に行く人はもちろん、行かない人もこの書籍は持っておいて損はありません。お値段も2800円は高くないかと。というのも、これはカタログではなく立派な書籍です。しかも、30年間という長い時間を、展示会、コレクション、考察を通しながら、250ページにまとめられている。読みやすいですし。

 

編集には、京都服飾文化研究財団理事、キュレーターとして有名な深井晃子氏を中心に、書籍 「ファッションは語りはじめた 現代日本のファッション批評」や批評誌「ファッショニスタ」の自費出版も行った蘆田裕史氏、UAの栗野宏文氏、哲学者バーバラヴィンケン氏、エディターのスザンナフランケル氏など、様々なファッション研究、批評家、ビジネス関係者が参加しています。展示会に関する膨大な資料をもとに、代表するデザイナー、スタイル、背景を紹介しています。川久保玲、山本耀司、三宅一生の流れが大きいですが、この3人を含めて大きく捉えた書籍はありそうでないので、後々貴重になると思います。

 

<目次>
序文
「Future Beauty 日本ファッションの未来性」 深井晃子
書き換えられたファッション帝国 バーバラ・ヴィンケン

陰翳礼讃
平面性
伝統と革新
クール・ジャパン

ISSEI MIYAKE
REI KAWAKUBO
YOHJI YAMAMOTO
JUNYA WATANABE スザンヌフランケル
JUN TAKAHASHI
TAO KURIHARA

ネクスト・ジェネレーション 栗野宏文
年表 参考文献 写真クレジット

 

 

 

日本のファッション未来性を過去30年のデザインから考えてみる

 

 
■3人のデザイナーと3つのカテゴリが世界に影響を与えてきた

本書籍の中心人物は、日本ファッションの30年の黎明期、川久保玲、山本耀司、三宅一生の3人。そして、この3人に師事、影響をうけたデザイナー達が主です。

90年代以降から、藤原ヒロシフィルターを通った「裏原系」というスタイルとサブカルチャーがモードへと昇華していきます。その中心として、アンダーカバーの高橋盾氏が紹介されています。また、川久保玲の右腕としてコムデギャルソンから暖簾分けを許された渡辺淳弥。

僕が興味があるのは、ゼロ世代と言われている2000年代に入り12年、誰がポスト裏原系時代として欧米に影響を与えているか。アンリアレイジ、ミキオサカベ、ミントデザインズ等は評価されていますが、前衛的という言葉だけならたくさんあってよくわからない。どのブランド、デザイナーがネクスト・ジェネレーションの主流としてつとめているのか?それが、栗野宏文氏の寄稿で載っているので、後で紹介します。

 

 

◎欧米のファッションの常識、評価軸を壊した3人

川久保玲、山本耀司、三宅一生が世界で注目される、1983年よりも10年前、森英恵、山本寛斎、高田賢三がパリで前衛的な部類として有名になっていました。しかし、それはあくまで欧米の評価軸でのお話。当時のファッションよりも風変わり、新しいというまで。
70年代の日本は評価はされていましたが、その評価軸をぶっ壊してファッション関係者を思考停止にしてしまったのが川久保玲、山本耀司の「黒」「ボロ」「アシメントリー」「貧乏主義」だと書かれいています。
これに、一枚布の「平面性」で同じく話題になった三宅一生が加わり、1983年その座を確固たるものにします。喪服、ボロボロで汚らしい、物乞いルックなど、批判もされていましたが、その後これらの要素は「前衛」「衝撃」と言われ、欧米のファッション関係者に新しい「評価軸」を与えられました。

この評価軸が1990年代から言葉で表現される「脱構築」です。

この「脱構築」で東京デザイナーの第2世代「ビッグスリー」と呼ばれ、バーバラヴィンケンいわく「書き換えられたファッションの帝国の誕生」と述べています。 詳細は、本書籍を読んでもらいたいのですが、簡単にあげると以下の3つ。

陰翳礼讃 => 黒にも影があるように色々な表情があり美しい。
平面性と間 => 折り紙があるんだから一枚布から服もできる。くびれにも間を入れて消したり、左右非対称でもいいよね。西洋の美=世界共通の美とは限らない
伝統と革新 => 伝統的な技術と独自の開発力。日本の素材は「皮膚=布=服」のように考える。技術は、イッセイミヤケの「新合維」「プリーツ・プリーズ」「A-POC」。

実際、このビッグスリーは今でも欧米からアワードを受けたり展示会を開催して、大きな影響力があることはご存知でしょう。詳細は、過去記事で恐縮ですが観て頂けたら幸いです。

三宅一生、川久保玲、山本耀司と芸術の世界

 

ポスト裏原時代の代表はサカイとkolorの夫婦ブランド?

 

■裏原系時代の次は阿部千登勢氏のサカイ、阿部潤一のkolor

 

◎裏原時代~現代のミッシングリンクを探る

前述の通り、僕が知りたかったのはここ。裏原系時代の後は、日本ファッションのメインストリームを担うアイコン、デザイナーはなんだろう?その時代を皆さんとともに過ごしているにも関わらず、いまいちつかめなかったんです。ポスト裏原系なら、サスクワァッチファブリックス、ファゼッタズム、ガンリュウコムデギャルソン、ブラックミーンズなどがあります。しかし、時代は裏原系が主流ではありません。

そのヒントが、UAの栗野宏文氏の寄稿「ネクスト・ジェネレーション」で書かれています。ポスト裏原系時代は、阿部千登勢氏のサカイ、阿部潤一のkolor。夫婦にしてコムデギャルソン出身。ついでいいうと旗艦店も同じ青山です。

 

前述の通り、クール・ジャパンの前までは、既存の洋装への問いかけを常に行い、西洋衣服文化の常識を覆す挑戦的な服作りがメインでした。このファッションは、日本の「侘び寂び」なんて言われ方もして「芸術、文化、哲学」の視点からも海外から研究対象として捉えられます。

それとは違い、ストリートカルチャーという違う場所から、一部モードへと昇華していったのが裏原系。有名なのは、アンダーカバーの高橋盾、ナンバーナインの宮下貴裕。90年代から2000年代初めを牽引。ミハラヤスヒロも、サンディカ正式加盟となったブランド。
レイヤード、コラボレーション、緩いなど、モードで今日一般になっているこれらは、もとは裏原系なんじゃあないでしょうか?

 

 

◎着ることを問う時代から、リアリティを兼ねた凝ったつくりへ
なんで、UAの栗野宏文氏がポスト裏原の旗手として、阿部千登勢氏のサカイ、阿部潤一のkolorを出しているかというと、「リアリティ」という評価軸を持ってきたから。これは、経済不況という今日でも勝てる経営的数値、利益管理という面も含めています。

阿部千登勢氏のつくる服は、勤めていたトリココムデギャルソン時代から「単品の女王」と言われていたそうです。飛ぶように売れていたことから、名がついたそうな。
「ひとあじデザイン」のニットが、ファストファッションではできない凝ったつくりとして、眼の肥えた消費者にウケた。
一方、奇抜ではないから昼夜外出使える便利な高品質服として認知された。独立した後も、母として、自宅で作業するところから、大規模にせずコツコツと拡大して、パリコレクションデビュー、モンクレールとコラボ、青山の旗艦店オープンまで登りつめた。
夫の阿部潤一氏のkolorも、2005年からパリで展示会を開き、今季ついにパリコレクションデビュー、その前には青山に旗艦店も持つ。素材とディテールの独自性に世界から高い評価を受けています。特に、素材の魔術師と言われる独特の感触はインパクトあります。ショワショワ。

 

栗野宏文氏は、サカイなどのブランドを「着る側の生活感覚をしっかり持ったリアリティーの解決」と言っています。

30年前、着る側に挑戦状を叩きつけて、当時のリアリティーとはかけ離れた「脱構築」を築いてから今日、今度はリアリティーの中で独自性を追求するというのは、なんとも興味深い内容です。個人的には、ビズビム、まとふもこの部類に入ってくるんじゃないかと。

かなり凝縮された1冊です。私は、どこかで必ず「Future Beauty 日本ファッションの未来性」展に行きますが、この書籍が一緒に発刊されたことが、まずハッピーだと思います。

関連:「Future Beauty 日本ファッションの未来性」開催記念「Future Beauty」発刊

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