1995年からのファッションを考える『拡張するファッション』Thinking about how to fashion’s define and extension from 1995

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■モードファッションでもカワイイでもない、1995年からのファッションのあり方

拡張するファッション アート、ガーリー、D.I.Y.、ZINE…… (P-Vine Books)
林央子

ブルース・インターアクションズ 2011-05-28
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【本書の概観】

まずはホンマタカシの表紙にやられますね。

1995年以降というのは、ファッションとビジネスがさらに深い関わりになり(LVMHが例)、インターネットというファッション業界をひっくり返してしまう(選ばれた人しか入れなかったパリコレを、現在は中継で誰でも観れる)強力なツールが本格的に普及した時代です。そして、ラグジュアリーブランドの大衆化も、まさに1995年あたりからです。

『花椿』の編集部、 here and there vol.10 the BLUE issueのもとの発行人、パリ・コレクション・インディヴィジュアルズの著者である林央子氏のインタビュー資料などをもとに、主に1995年からのファッションの歴史を、氏の角度から紐解いていく『拡張するファッション』。当時の写真あり、ヘルムート・ラング氏の貴重なインタビューと写真?ありで、レアですね。抽象的ですが、読んでいくうち入り込めて面白いです。

ファッションの歴史だけに関する書籍はいくつか出ておりますが、本書は1995年からの一般的なモードやストリートファッションの歴史というより、ファッションの定義の再構築だと思いました。

ですので、「巷にあふれた情報とファストファッションによって、トレンドがすぐに取り入れられてしまった現代、ラグジュアリーブランドはかつての輝きを失った - 」みたいな、恨み節を叩くのではなく、ファッションは背景、または文脈(コンテキスト)によって拡張していることを僕らに教えてくれる本です(とはいえ、パリコレは2000年代以降は急速に輝きを失ったと述べていますが。)。

ファストファッションが台頭し、パリコレ神話性崩壊、モードの民主化によって、ファッションは消費についてだけの狭い世界に閉じ込めるべきではない。ファッションのその周辺の広い人々にとって、思考の対象になる時代が訪れたのではないだろうか。

これが、ファッションの文脈であり、上記のことを林央子氏は『拡張するファッション』という題名にそれを託して、果敢に挑戦されております。その点が、はじめの「Introduction - ファッションを考える、ファッションが楽しくなる」で述べています。

この本は、現代的クリエーションとは何か?ということを、ファッションを軸に考えている。内容としては、アートや雑誌や写真、自主出版やZINEの話題を含んでいる。結局ファッションはそれだけで分離された世界に置かれているのではなく、写真や映画などさまざまな表現分野と結びついているし、現代の人々の生活とともに、あるのだ。

注意としては、あくまで林央子氏のフィルターを通していること。これが1995年以降のファッション史をまっすぐ照らしているわけではないということです。どちらかというとマニアック。関係者がたくさん出てきますし、林央子氏の経験に基づいたものです。でも、だからいい。というのも、林央子氏ご自身、1993年から2000年まで鬼のようにパリコレクションを調べつくされていらっしゃいます。相当の知識と、深い考えをお持ちだと思いますが、皆が想像しやすいパリコレの話題はほとんどありません。マルタンマルジェラとヘルムート・ラングは少し出てきますが、アントワープ6などの話題はないです。1995年だというのに、裏原系の高橋盾氏やNIGO氏もなし。

 

 

【本書のキーワード】

自主性、 日常への視線、マルチクリエイティビティ⇒ファッションの文脈⇒ファッションの拡張

「これからのファッションの話をしよう」(あれ、どっかで聞いたことのある名前)という裏題名もあるように思えました。この本を読んだ時、皆さん1人1人がクリエイターだということを認識されるのではないでしょうか。

 

<目次>

introduction

ファッションを考える、ファッションが楽しくなる

 

Chapter1 Action Speaks Louder Than Words

自発性とマルチクリエイティブティ

 

ガーリーとは何だったのか?

キムゴードン、1996年 ラディカルに生きる

ヒロミックス、2001年「21世紀はいろんな職業を持っていい時代になる」

長島有里枝、2001年「写真より文章の方がいいことが出てくるかもしれない」

ミランダ・ジュライ、2010~2011年

「自分でも説明がつかないけれど、挑戦したいと駆り立てられるの」

 

Chapter2 クリエイティブファッション

システムそのものを構築するクリエイターたち

 

やり方は自分たちでつくる

パリコレ、多様化の行きつく先に

BLESSのコラボレーションワーク

BLESS ある美術館での表現

前田征紀とCOSMIC WONDERの歩いた道

パスカル・ガテン 新たになるファッションの平野へ

 

 

Chapter3 スーザン・チャンチオロ

ファッションでもアートでもなく

スーザン・チャンチオロという生き方

2002年春、「誰もひとりでは生きていけない」

ファッションもアートも超えた今日的なものづくり

2010年冬、「どんな瞬間もクリエイティブに生きることができる」

2010年秋、「京都のドキュメンタリー」

 

Chapter4 『Purple』は何を変えたのか?

インディペンデント雑誌、個人出版の出発点

 

『Purple』、インディペンデント出版の系譜

『Purple』の1990年代

エレン・フライス、2003年「いいえ、私は編集者よ!」

エレン・フライス、2008

「雑誌をつくることは、アートプロジェクトと同じ」

『Purple』10年史

BLESSとインディペンデント雑誌

ベンジャミン・ソマホルダー、2007年 Nievesの魅力

エレン・フライス、2010

「私たちはある地点において、自分たちのテイスト以上に成功していた」

 

Afterword

Nakakoとわたし

 

Acknowledgements

お世話になったみなさまと、まだ見ぬ読者の方へ

 

Chronicle

1910-2011 ファッション年表

 

 

【ガーリーとは反逆精神?】

ガーリーとは?という定義に関しては、All About用語集では以下のように記載されています。

ガーリーな雰囲気、ニューガーリー、ガーリッシュな甘さ、ガーリーテイスト、ガーリー&リラックスなど。語源となる売春婦=ガーリー(girlie)という意味にこだわらず、女性らしさの見直しや、キッチュな女らしさ、セクシーだけどキュート、あくまでも女性らしさを失わず、いかに変化発展していくかを楽しみながらチャレンジする姿勢への賞賛と、ほんの少しの自嘲と照れが込められた言い方だと解釈できる。肩肘張らず、でも女性という個性を大切にして、自分キャラを発揮したい人たちに多用されている。

1990年代から2000年代にかけて、瞬く間に拡大していったガーリーカルチャー。この背景には、女性の社会進出があるのですが、さらに「日常への視線」「自主性」「マルチクリエイティビティ」に著者は目を向けています。アート、文章、建築、映画などファッションの文脈(コンテキスト)は、マルチクリエイティブティとしてこの時の女性が表現しようとしていったところだと説明されています。この本の大事な部分でもあるので、1つずつ簡単にあげてみましょう。

 

 

◎自主性

その女性の1人として、1990年代前半のXLARGEの女性版、X-girlを立ち上げたソフィア・コッポラとキムゴードンが出てきます。X-girはガーリーファッションの代表的なブランド。

この2人のデザイナーは、ファッションと関係あるものの、ファッションデザイナーとしての経歴は浅い。だからこそ、凝り固まっていない自由度あった。一方で、興味深いのはソフィア・コッポラ、キムゴードンの考えとして、母親の世代である1970年代アメリカのフェミニストたちへの反逆であることが伺えることを著者は述べていることです。そして反逆は、自主性を生むことに変わっていったのです。

著者と、キムゴードン、ソフィア・コッポラのインタビューから見えてくるのは、1970年代のファミニズムのルールへのアンチテーゼ。「女性らしい格好」「これをしなくてはダメ」・・・ガミガミ。こう言う線を引くことではなく、何でもトライしてみて思うままに進んでいくことではないか、私は私のままでいい、と主張されています。

それを一言で言うと、「Action Speaks Louder Than Words(あれこれ言わず行動でしめす)」。

 

 

◎日常への視線

ヒロミックスと長島有里枝が「ガーリー写真」の潮流として紹介されています。両者とも、第26回木村伊兵衛写真賞を受賞。インタビューがありますが、「日常の中」から美を発見する鋭い素質がある。代表して、ヒロミックスのくだりの一部。

家に昔のゴミ箱があって、それがサイケデリックな花柄だったんですけど、ある日突然、カワイイと思えたんです。

ここからご本人は1960年代にはまり込んでいく・・・ビートルズも聴きまくる・・・きっかけは日常に転がっているという1例。

 

◎マルチクリエイティビティ

長くなるのでここでは割愛しますが、ミランダ・ジュライのように、バンド、映画、小説といった表現手段=「マルチクエイティビティ」は、今紹介してきた女性達に通じるもので、皆さんファッションに関係を持ちながら映画、音楽、写真、文学、webなどに活躍の場を拡大していきます。

ちなみに、この自主性、日常への視線、マルチクリエイティブティの3つは拡張するファッションの定義のベースとなります。なので、長めにガーリーを通してご紹介させて頂きました。

決まりきったルールからの脱却。自分の着たい服を着る。新たな表現を見つける・・・。反逆から自由への解放・・・これがガーリーの精神かもしれません。

 

 

 

【ファッションの表現手段は年2回のランウェイショーだけではない】

1995年から、パリコレクションのほうでも変化が起きていました。マルタンマルジェラ、ヘルムート・ラングは顔を出さない、取材を受けないデザイナー。廃墟のような建物でショーを行ったり、それまでのグラマラスで豪華絢爛なデザインや、ランウェイショーとはかけ離れた方法を取ります。ビジネスよりも姿勢を重んじるデザイナー達。もちろん当時は批判も多かったようですが、今となっては伝説となっているといえるのではないでしょうか。

 

 

◎ファッションショーのシステムを再構築する

さて、本書では時同じくして、ファッションのシステムそのものを構築するクリエイターの話となります。生き方の自由を勝ち取ったのがガーリーなら、ファッションの発表の場、発表方法が多様化していくのも1990年代から。ここでは、マルジェラのようにデザイナーが表に全く出てこないBLESSやCOSMIC WONDERが登場します。

2つのブランドは、コアなファンがいるもののコレクションの発表を定期的にパリで行っているわけではありません。

「自分達でやりたいことを実現するシステムは、自分たちでつくる」

この自主性と、それを表現するためにマルチクリエイティブティを使用する、日常への視線を大事にするという点で同じ。BLESSの作品はこちらのHPから観れます

BLESSの場合、パリコレの発表を他のブランドのランウェイショーの立見席にしてしまう。観客だと思って、その場にいた人が実はBLESSの衣装を着たモデルで、BLESSの映像での発表の中で、ゲリラ的に撮影した映像をその日のうちに編集。そして会場で流すという非常に変わったもの。以下の動画がその1つだと思います。他のブランドの発表の場に紛れ込んでいますねぇ(笑)。 ウォーリーを探せじゃないんだから。

ほかには、衣装を着てサッカーをするのが発表の場だったり。「よく見えない」という観客の指摘こそがBLESSのねらいであり、「服が人より目立ってはならない」というのが主張なんだと。

この「日常への視線」を大事にする点と同時に、アートの分野に深く関わっているのも特徴。BLESSやCOSMIC WONDERは、美術館での発表、コラボレーションが多い。COSMIC WONDERはアートプロジェクト、ファッションプロジェクト、印刷物や音楽CDのプロジェクトの3つに分類されている。マルチクリエイティブティを採用することでたがいに響き合うようにしたい、とCOSMIC WONDERの前田征紀氏は述べています。

 

 

 

【自主性は拡張する】

本書はファッションの拡大可能性について、著者の経験をもとにさらに具体的な事柄をあげていきます。コラボレーションとインディペンデント雑誌(個人出版)です。

◎コラボレーションの定義

コラボレーションといえば、他のブランドやデザイナーどうしが協働して1つの作品を作り出す行為。最近の大きなコラボレーションとしてルイヴィトン×村上隆が載っていますが、そもそもコラボレーションのベースには、「誰も1人では生きていけない」という発想から出るものだとデザイナー、スーザン・チャンチオロは考える。生活の中で関係しあう事自体がコラボレーションという素敵な出会い。実際の製作で言えば、「製作活動を行っていくことは、生きるために呼吸をすることと同じくらい当たり前、誰かとコラボレーションしていくことであるということ」と著者はスーザン・チャンチオロは表現しています。

◎インディペンデント雑誌「Purple」

今では「PURPLE FASHION」としてラグジュアリーブランドの広告で創刊当時よりも豊富な収益で経営されているが、1992年に創刊した個人出版によるインディペンデント雑誌「Purple」は、編集者が自分たちが選んだ写真家とファッションデザイナーという、クリエイターどうしのダイレクトな出会いの場をプロデュースするだけで、あとは「自由」。完全に放置プレーですね、これは。こんな形で当初行われていたなんて知らなかった。画もあるので詳細は本書をご覧頂きたいのですが、それぞれの自主性を重んじています。一方で、1992年でもうコンピュータを使用した作業を行っていたというのも、当時の紙媒体としては革新的です。HPはこちら

著者が言う「Purple」が出現して最も変わったこととして、世界中の都市に「アートを愛好し、かつインディペンデント雑誌を愛好する嗜好を持つ人々の層」が生まれたということ。

そして、このPurpleとコラボレーションしたのが上記で紹介したBLESSだったりするので、面白いですよね。 こうやって、記事が一見バラバラの内容に見える本書なのですが、点と点が結びついていきます。この辺が林央子氏のなせる技。

さて、そろそろこの辺にしたいと思いますが、上記の挑戦は全て世の中に受け入れられたわけではなく、批判もされているようです。これはかつてのパリコレも同じで、民族と階級からにじみ出る美意識、歴史観に根ざしているため、価値観がクラッシュする場であると林央子氏は述べています。似ているのがクラシック音楽で、チャイコフスキーやストラヴィンスキーでも今では傑作と言われる曲が、初演でボコボコに言われ、喧嘩が起きて公演中止になったものもあるくらいです。

最後に、これからのファッションの行方として一番印象的なオランダのコンセプシャルデザイナー、パスカル・ガテンの言葉を紹介したいと思います。

「現在機能しているファッションシステムは、もはや全く意味がなく固定的なシステムはすべて意味がなくなるだろうという直感があります。私たちの毎日行きている経験に、活動的で、楽しく、参加型の、これまでとは大きく異なるファッションのやり方が必要です。ファッションはもはや、知識のあるわずかな人々だけが関わることのできる排他的な世界ではなく、至るところに豊富にあり、楽しみと祝福をもたらすものになるでしょう。最終的に、ファッションは単なる知覚の問題になるだろうと感じています。技術と知恵と資源を分かち合い、交換しあう人々とともにある、革新的なものになるでしょう。」

これが、冒頭でお話した、皆さんがクリエイターになるということの理由の1つです。後はじっくり読んでみてください。実は、最後に1910-2011年のファッション年表が付いています。これも貴重だったりします。 

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