書評:『ファッションの社会学 流行のメカニズムとイメージ』Review: Fashion society Mechanism of trend and image

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■ファッションの流行を社会学を中心に捉え関係性を浮き彫りにした書籍

ファッションの社会学―流行のメカニズムとイメージ (文庫クセジュ)
北浦 春香
白水社 2009-02-13
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驚きました。ページ数は少ないのですが、この書籍『ファッションの社会学』は、ファッションの流行のメカニズムに関する純然たる社会学の理論・書籍があることを紹介するとともに、若干の議論と理論の発展を分析するもので、既存のファッションに関する書籍とは一線を画す内容となっています。

特にダンディズムに関しては、 薀蓄やイギリス人の文化的背景というよりも、題名のとおり社会学的な切り口がメイン。「生活のエレガンス論」「服装論」「衣服哲学」など、当時の有識者が熱い論争を起こしていることは、この本を読むまで知りませんでした。最終的には、林勝太郎氏の英国流おしゃれ作法と同じ反逆精神に収束されていきます。

ファッションの流行のメカニズムの起源は、19世紀の社会背景及び政治体制の崩壊から生まれたものと定義し時系列に説明されています。

落合正勝氏や、山室一幸氏の所謂ファッションブランドの歴史や薀蓄・着こなしを説明する書籍ではなく、アカデミック、社会学からにファッションの流行を考察する中身が斬新でした。短いので、あくまで紹介で終わってしまっているのが残念ですが、 そこから読者個人で掘り下げていくとファッションの学術的な論理の構築及びマーケティングに役立つ本かもしれません。

すごく簡単にファッションの流行のメカニズムの変化を書くと、本書籍は以下のような歴史的な段階を踏んで、成長してきたと主張しています。

政治・社会階級  ファッション黎明期 

——————(19世紀)

文化的な側面  ファッション発展期

————–(20世紀初頭)

人間の内的側面と記号モード体系  ファッション続・発展期

———(20世紀)

個人の自己実現とイメージ → ファッション洗練期

——————–(1970年から)

以上のように、ファッションと社会の立場がだんだん変化していく様子を、あくまで社会心理学 を含む社会学、経済学の観点で諸説紹介しまとめあげていきます。政治におけるファッションから、社会階級におけるファッション、経済力がものを言うファッション、文化としてのファッション、そこから生まれた「区別と模倣」という流れでファッションの流行は1つの確たるものとなったことは、今までにない内容で面白い。

目次を見ていただければ、既存のファッション関連の書籍とは違うテイストであることが分かるかと。

<目次>

第一部 黎明期

第一章 ファッションと社会

Ⅰ 西洋的な現象

Ⅱ 社会現象

Ⅲ ファッション誌

第二章 作家とジャーナリスト

Ⅰ ダンディズムについて

Ⅱ ファッションに関する著述

第三章 社会学者と経済学者

Ⅰ 模倣

Ⅱ 有閑階級

Ⅲ 区別

第二部 発展期

第四章 文化社会学とファッションの社会学

Ⅰ 文化のなかのファッション

Ⅱ ファッションの文化的意義

第五章 ファッションの社会学の成立

Ⅰ 華奢と対抗意識

Ⅱ 社会心理学的な広がり

Ⅲ 秩序ある内生的システム

第六章 ファッションの社会学に関して

Ⅰ 閉鎖的な記号体系

Ⅱ フェミニズム

第三部 洗練期

第七章 反抗と社会表現としての社会学

Ⅰ モデル

Ⅱ 形象とイメージ

第八章 ファッション・イメージの社会学

Ⅰ エキゾチシズム

Ⅱ 時間

Ⅲ 性的役割とアイデンティティー

Ⅳ 性

第九章 ファッション・イメージの人類学

Ⅰ 方法論の基礎

Ⅱ 解釈学

気になる箇所はたくさんありますが、取り分けファッションの流行メカニズムの誕生、黎明期と発展期で印象に残った部分だけ少し紹介したいと思います。

・ファッションにおける流行のメカニズム1「模倣と区別」

流行のメカニズムが発生したとき、19世紀初頭では「模倣と区別」がその中身でした。模倣というのは、下層階級が上流階級の服装を真似することです。区別というのは、上流階級が下層階級とファッションを差別化することです。この流動的な流れが、ファッションの流行の始めのメカニズムとされています。これについて、社会学的に解釈しさらに発展させると、ケーニッヒがその矛盾を指摘しつつ、その後出てくるベルが階級ファッションからの脱却を述べていることが面白いです。

区 別がその役目を十分に果たすためには、周囲一般がそれを認めるものに呼応していなくてはならない。つまり、目にとまるには、自分の属する集団が認める伝統 的な価値観を受け入れる必要がある。そうだとすれば、新たなパラドックスが生じる。ある社会集団の中で、区別されることと統合されることは相容れないもの ではないということだ。- 模倣が社会関係そのものを作りだすわけではない。既存の関係を強化し、それを知らしめるものである。

このケーニッヒの洞察から見た「模倣と区別」の矛盾から、ファッションの流行のメカニズムに関して新しい考え方として、ベルの社会階級・経済力に頼るものではなく、シルエットなどの形状の区別が現れたことを述べています。これはファッションの歴史にとってフランス革命級に大きな出来事だったそうですよ。

ちなみに、当時の服は「華奢」であることが流行だったそうです。エディスリマンは、この再来だったんですかね?

・ファッションのおける流行のメカニズム2「記号表現とモード体系」

ここからファッションの話は、人間の内的側面に入ります。社会学のディープな面が見えてきます。

ファッションの流行のメカニズムは、1960年代「モードの体系」を書いたロラン・バルトによって、さらに社会学かつ心理学的な側面を強くしていきました。そこには、記号学を衣服に反映した考え方がありました。記号学とは、言語を始めとして、何らかの事象で代替して表現する手段について研究する学問、とウィキペディアでは書かれています。バルトはその大家です。

ファッションにおける記号とは、1つのファッション用語について、あらゆる意味やストーリー、背景があって、その言葉以上の価値を提供していくことがあるということです。ロラン・バルトの言葉を借りると・・・、

ファッションとは分類作用であり、意味論的な体制というよりもむしろ、はるかに記号学的な体制だと思われる。- 記号表現は完結した形としてのファッションの陳述であり、記号表現はファッション雑誌がみずから抱いていて人々に与えようとしている世界とモードの表象なのだ。

衣服ほど、「言葉」から発せられ拡がる世界観もそうない、ということ。

以上のことは、ファッションの流行を語る上で大切な理論ですが、まず服を二次的・従属的に捉えていることから、哲学的転回が欠けているそうです。

その後、話は流行の洗練期に入り、フロイト的論理、マルクス主義、マックス・ウェーバーなどの精神・思想的な理論も登場し、衣服を二次的・従属的な捉え方から、さらに個人の行動・社会構造を決定する、第一義的な人間の内面、より高次の捉え方をする位置づけが主流となります。ここからがかなり難しい。

個人的には、著者のF.モネイロンが現代のファッションデザイナーを語る上で、やれ東洋的だ、やれレトロだ、と昔のデザインテクニックだけを使い、西洋文化にはなかったエキゾチシズムというものをいじくりまわすのを好むことに、「それは何の意味もなく本当の意味がねじ曲げられ歪曲化されてしまう」と一刀両断しているところが印象的でした。

また、上述の記号学におけるエクリチュールは、広義において音楽の作曲法にも通じる意味なんです。また、あらゆる生活における文化という点で、ロック音楽と服装だけが直線的な歴史観を有しておらず、3つの時間的サイクルを合わせ持っている、というブルデューの「衣服と○○分析」に関する結果は、音楽と服の新しい深い関係性を考えることができて興味深かったです。

ちなみに、洗練期の特徴的なデザイナーとしてあげられているのが川久保玲、マルタンマルジェラ、ヴィヴィアンウェストウッド、クリスチャンラクロワがあげられています。

限界としては、やはりページ数が少ないためそれぞれの書籍の紹介が列挙されている点が多く、若干理論どうしの関係性が希薄な部分があり乱暴で分かりづらいときがある。もう1つは、流行のメカニズムが「洗練期」になると、ほとんど具体的に解説がなくっている点です。

少々挑戦的で難しいところはありますが、最後のページのほうにたくさんの参考文献が載っています。研究の真髄は参考文献にあり、という言葉もあるかどうかはわかりませんが、ファッションと社会学について掘り下げて読みたい人には、スタートとしてちょうどよい量と内容になっていると思います。 

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